近年は新築に代わる選択肢として、リノベーションが当たり前になりつつあります。
しかし、実はこの「リノベーション」という言葉や概念が広まったのは、ここ10~20年という比較的最近のことです。
日本の住宅市場の歴史を紐解きながら、なぜ今リノベーションが主流になりつつあるのかを解説します。
日本におけるリノベーションの始まり
今でこそ当たり前になった「リノベーション」という言葉ですが、かつて日本の住宅市場にはその概念は存在しませんでした。
では、リノベーションは一体いつ、どのようにして生まれたのでしょうか?
「リノベーション」が生まれる前
建物を元の状態に戻すことを主な目的とする建物の修繕は「営繕」と呼ばれ、かつてはこの営繕のみが住宅の修理・修繕の用語として用いられていました。1970年頃から広く使われるようになった「リフォーム」という用語も、「現状回復」という考え方が基本となります。
これに対し、「リノベーション」は、単なる修繕ではなく「付加価値」を付けて性能やデザインを一新し、新しい価値を創造するという意味合いで用いられます。この概念は、1990年代の都市における古い建物の活用ブームから広がり、現在の住宅にも広く浸透していきました。
この流れは、リフォーム・リノベーションに関わる各企業にも影響を与えます。例えば、住宅設備メーカーとして知られるTOTOは1993年からリフォーム専用の製品モデルを「リモデル」として展開し始めました。
リフォームの一歩先をめざし、期待以上の満足をお届けしたい。
その理念のもと、TOTOリモデルは1993年から歩んできました。
すべてのお客さまに納得してリフォームしていただきたい、
はじめての人でもあんしんして進められるようにしたい。
お客さまの目線に立って、知りたかった情報を「みえる」ようにし、
それによって「わかる」という「あんしん」をお届けしたいと、
わたしたちは考えます。
参照:「TOTOあんしんリモデル」
1990年代頃から、新築向けの高性能な設備と、中古住宅の改修に適した設備とを明確に区別するようになり、「リノベーション」の土台が出来あがってきます。
2000年代
2000年代に入ると、不動産仲介と建築設計を組み合わせた、新しいビジネスモデルを持つ「リノベーション専門会社」が誕生します。
さらに技術面でも、それまで使用されていた鉄や鉛製の給排水管を、より耐久性が高くリサイクルしやすい「塩化ビニル管(塩ビ管)」に切り替える動きが加速しました。こうした設備の刷新が、単なる表面的な改修を超えた「リノベーション」という言葉の普及と実態を後押ししました。
そして、この動きを決定的に後押ししたのが国の政策です。2006年に施行された「住生活基本法」では、リフォームの実施やマンション修繕の実施率を向上させる目標を立てるなど、「新築をどんどん建てる」という考え方から、「既存の住宅=ストックを活かす」方針へ移行することが強調されています。
リノベーションの発展とトレンドの変化
2000年代のリノベーションは「一部のクリエイターに流行したサブカルチャー」的な側面が強く、大衆的にはまだまだ認知度が低い時代でした。
2010年代前半

2010年代前半になると「リノベーション」という言葉が本格的に普及し始め、リノベーションを専門とする会社が増加し始めます。
急速な広がりを受け、2013年には各企業のリノベーションをデザイン・機能・評価する「Renovation of the year」と呼ばれるコンテストが誕生しました。
初年度の総合グランプリ受賞作品からも分かるように、リノベーション市場で人気だったのは「個性的でかっこいいデザイン」でした。新築住宅の画一的な間取りやデザインに飽き足らない人々が、自分らしい暮らしを表現する手段としてリノベーションを選ぶ時代だったといえるでしょう。
この時期のリノベーションは、既存の建物を大胆な間取りやデザインで一新し、見た目の付加価値をつけることに重点が置かれていました。
2010年代後半

リノベーションの普及にしたがい、見た目だけでなく性能を重視する傾向が強まっていきます。Renovation of the year 2019では、断熱性を重視したリノベーションが総合グランプリに選ばれています。
新築価格の上昇に伴ってリノベーションでも新築並みの快適性を求める人が増えたこと、中古住宅の弱点である断熱性能・省エネ性能をリノベーションでいかに高められるかが重要視されるようになったことなどが、性能重視のトレンドに影響を与えたと考えられます。
断熱性や耐震性の向上、二重サッシの導入、給排水管の更新など、目には見えない部分の品質を高めることが、リノベーションの新たな意味として捉えられるようになりました。
現代のリノベーション

2020年代に入り、リノベーションは「デザイン」「性能」といった価値に加え、「自分らしい生き方を叶える手段」へと進化しました。この時代の流れを象徴するキーワードは、「ウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)」と「住まいの多機能化」です。
Renovation of the year 2023の総合グランプリには、消化器官の難病を抱える人が生活しやすい空間をコンセプトとして制作された作品が選出されました。このように、機能性やデザイン性はもちろん、多様化する住まいの需要に適用したリノベーションが求められるようになりました。
リモートワークの普及
コロナ禍を経てリモートワークが定着したことで、家は単なる居住空間ではなく、仕事をする場所としての機能が求められるようになります。これにより、独立したワークスペースを設けるリノベーションが増加するといった変化が生まれました。
通勤時間や駅からの距離といった利便性だけではなく、「体感的・精神的な心地よさ」を重視する人が増え、心身ともに豊かに過ごせる理想の空間を追求することが、現代の家づくりの主流となりました。
リノベーション済み物件の進化
近年進化しているのが、リノベーション専門会社などが中古物件を買い取り、フルリノベーションを施して販売する「リノベーション済み物件」です。
リノベーション済み物件は、物件探しからリノベーションの設計・施工まで、すべての工程が完了した状態で販売されています。そのため、個別にリノベーション会社を探したり、打ち合わせを重ねたりする手間が省けます。
一昔前までリノベーション済み物件は水回りや壁紙を交換するだけの簡易的なものが主流でした。しかし、近年ではデザイン性や機能性の水準が高くなり、新築と変わらない、むしろそれ以上の魅力を持つ物件が増えています。
新築物件と比較すると費用を抑えて購入できることから、近年ではさらに注目度が高まっています。
あなたらしい暮らしを叶えるリノベーションへ

リノベーションは単に古い家を修繕する行為に留まらず、人々の暮らしや価値観の変化に対応しながら、理想の住まいを創造するための有力な選択肢となっています。
かつては一部の専門的な領域や個性的な志向を持つ人々に限られたものでしたが、時代の変化とともに、その価値は広く認識されるようになりました。
リノベーションの最大の魅力は、暮らしに合わせて家をアップデートできることです。家族が増えたり、働き方が変わったり、ライフステージが変わるたびに、住まいも一緒に成長していくことができます。もちろん、見えない部分の性能を上げて、新築以上の快適さを手に入れることも可能です。
「今選ぶべき家づくり」としてリノベーションを考えるなら、「立地の良さ」や「建物のポテンシャル(構造)」といった価値だけでなく、断熱性・省エネ性能などの機能面、自分のライフスタイルに合っているかも考えてみましょう。
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