
新耐震基準と旧耐震基準の分かれ目となる「1981年」。現在、旧耐震のマンションは築50年を超えるものも珍しくなく、新耐震であっても築40年に到達する建物が増えてきました。
「都心の好立地に割安な築古マンションを見つけたけれど、将来どうなってしまうのか? 本当に住み続けられるのか?」と感じていらっしゃる方もいると思います。
今回は、不動産業界のリアルな視点から築古マンションの出口戦略と現実を紐解いていきます。
2026年に建て替えに関する法律が改正
2026年4月1日より改正区分所有法が施行されました。
今までは区分所有者の5分の4の賛成が必要だったのが、耐震性、火災に対する安全性不足などの理由がある場合、4分の3(大規模災害時は3分の2)の賛成で決議可能に。
賃貸借している場合は建替え決議がされた場合に、金銭補償を前提として賃貸借等を終了させる制度を創設。その他、修繕や売却に関するさまざまな要件が全面的に緩和されました。
政府による建て替え促進の流れは今後も続くと考えられます。
大前提、建て替えも解体も当面増えない
とはいえ、結論から言うと、日本全国でマンションの建て替えが次々と進むような事態は当面の間やってこないでしょう。
区分所有法が改正されたとはいえ、マンションの建て替えには区分所有者の4分の3の賛成が必要です。建て替えにはさまざまな条件が絡んでくるため、すぐに建て替えできるとは限らないのが現状です。

国土交通省の公表データ(2023年時点)によると、マンション建て替えの実績は以下の通りです※2。
建て替え実績(累計): 全国でわずか約280件(準備中含む)
築40年超のマンション総数: 全国で約125万戸(2022年末時点)
日本の分譲マンションストック約690万戸のうち、旧耐震基準のマンションが急速に増加しているにもかかわらず、建て替えが完了・進行中の物件は全国で300件にすら満たないのが現実です。
建て替えが進まない理由
建て替えがなかなか進まない主な理由は、入居者の負担が大きくなるためです。
建て替えには数億円以上の資金が必要になることも少なくなく、入居者がそれを全て負担するとなると、一戸あたり数千万円の手出しになることも少なくありません。
高額な建て替えを入居者だけで負担するのは現実的ではなく、建て替えの案が出たとしても当然賛成票は集まりません。
したがって、何らかの外的要因がない限りは建て替えが進まないのが現状です。
マンションの寿命は100年以上?
「古いから危ない、寿命が来る」と誤解されがちですが、鉄筋コンクリート造(RC造)のマンションは、適切なメンテナンスを行えば100年以上安全に住めると言われています。

マンションの寿命を延ばすポイントは以下の2点です。
①定期的な大規模修繕工事
経年劣化等による躯体の不具合を定期的に補修し、コンクリートの劣化を抑制します。
年月が経つほど補修箇所が増えてくるため、築古マンションでは修繕積立金が高くなりやすい傾向にあります。
②定期的な仕上げ材による躯体保護
躯体面の塗装を定期的に塗り重ねることで、さらに劣化を抑えます。
つまり、築年数が古い=危ないのではなく、管理状況が悪い=危ないという捉え方で建物の寿命を考えることが大切です。
築古マンションの出口戦略①マンション建て替え
2025年3月時点におけるマンション建て替えの累計実績は323件(約26,000戸)となっています。全国に存在する築古マンションの総数から見ればごくわずかな割合ですが、実際に建て替えを成功させている事例も存在します。
実現困難とされるマンション建て替えを実現するためには、現実にどのような条件が必要になるのかを客観的な視点で解説します。
建て替えには容積率の上昇がほぼ不可欠
現状、建て替えの承認を得るためには、既存住民の費用負担を減らすために容積率の緩和による建物の増床がほぼ不可欠です。
例えば、既存の100戸の古いマンションを解体し、同じく100戸の新しいマンションを建てる場合、数十億円にのぼる解体・建設費を住民全員で均等に負担しなければなりません。
戸数や規模にもよりますが、1戸あたり2,000万円から3,000万円の手出しが必要になるケースが多く、これでは住民の大多数から建て替えの賛成を得ることは事実上不可能です。
一方、容積率の緩和によって100戸のマンションを150戸のより大きなマンションへと建て替えられる場合は状況が大きく変わります。事業協力者であるデベロッパーが増床分である50戸を取得し、新規の購入者へ高値で分譲して利益を出します。
売却益でマンション全体の解体費や建設費を賄うため、既存住民は手出しゼロ、またはごく少額の負担で新しい部屋を手に入れられます。
実際のケース:イトーピア浜離宮
旧耐震基準のマンションが、近年実際に建て替えられた代表的な事例をご紹介します。
1979年築のイトーピア浜離宮は、管理組合が居住者の経済的負担の軽減などを理念に掲げ、デベロッパーと協力して2023年に「ブリリアタワー浜離宮」としての建て替えを完了させました。
管理組合による建て替え基本理念は以下の通りです。
1 多数の高齢で経済的基盤の弱い居住者の経済的負担を軽減するため、還元率が高く、増床分コストが低いこと。また、新居での管理費、修繕積立金が負担にならないこと。
2 居住者の転出、転居、借家人への補償問題等での精神的・物理的サポートが得られること。
3 恵まれた立地と眺望を活かした魅力ある建築物であること。
東京建物「イトーピア浜離宮マンション建替事業(Brillia Tower 浜離宮)」
この事例では、敷地内に公開空地を設けることで容積率の割増を許容する総合設計制度を活用し、容積率を大幅に緩和しました。その結果、従来の14階建(328戸)から32階建(420戸)への大幅な増床を実現しています。
この建て替えが成立した最大の理由は、増床して新たに分譲した住戸が高値で確実に売れる都心の超一等地にあったためです。
現状、マンションの建て替えは増床分を買い取るデベロッパーが資金を出すメリットを感じるほどの立地の良さがあって成立するといえます。
築古マンションの出口戦略②解体して土地ごと売却
容積率の十分な緩和が見込めず、建て替えの合意形成が不可能な場合、マンションごとデベロッパーに敷地を売却して現金化し、管理組合を解散する「敷地売却制度」を用いる方法もあります。
実際のケース:浜松町ビジネスマンション
1973年に竣工した浜松町ビジネスマンションは、総戸数の9割以上が約12㎡という、主に単身者・投資用として所有されている物件でした。
建物の老朽化や耐震性不足といった課題を抱えていましたが、土地の所有者、つまり物件を保持する投資家たちにとって、自ら多額の資金を持ち出してまでマンションを建て替えることは経済的な負担が大きすぎ、投資利回りの観点からも合意形成を図ることはかなり難しくなります。
土地ごと売却して現金化する方が、組合運営の負担が少なく手離れが良いことから土地売却制度が可決され、最終的にデベロッパーへの売却が決まりました。
売却された敷地は2023年に「パークホームズ浜松町」という新しいタワーマンションへと生まれ変わっています。
都心では今後増加する予測
国土交通省などが公表している過去のマンション建て替え実績を見ると、全体の半数以上が東京23区内に立地しており、都心に建て替え需要が集中していることが分かります。
前述の通り、マンションの建て替えは容積率の緩和によって建物を大きくし、新たに生み出した販売用の住戸を売却することで事業を成立させます。そのため、そもそも新たなマンション需要が少ない地方や郊外では新しい部屋が高値で売れず、採算が合いません。
立地を理由にデベロッパーから建て替え事業への参画を断られるケースも少なくないのが実情です。
こうした背景から、今後のマンション建て替え事業は高い需要が見込める都心部では今後増加していくと予測されます。
急激に増えることはない
都心部で建て替えが増える傾向にあるとはいえ、その件数が今後急激に右肩上がりになることはありません。
法改正が進められているといっても、住民に不利な建て替え手法が強引に取られることはほぼありません。
裏を返せば、既存住民に対して手出し費用の少なさや資産価値の向上といった明確なメリットが提示された計画のみが、時間をかけて慎重に進められていくといえます。
中古マンションのリノベーションは今後も注目
建て替えや敷地売却のハードルが高い現実において、住まい探しにおいて現実的に重要なのは、日頃の管理や定期的な大規模修繕が行き届いたマンションを見極めて購入することです。
鉄筋コンクリート造のマンションは、適切に管理されていれば建て替えなしでも100年以上にわたって安全に暮らすことができます。管理状況の良い築古マンションの価値を最大限に引き出す手法として、リノベーションの重要度は今後も高まっていくと考えられます。
建物の基本構造や共用部の維持管理は管理組合に任せ、専有部分である室内をフルリノベーションした部屋に住む。この方法であれば、新築に比べて購入費用を大幅に抑えつつ、現代のライフスタイルに合った快適な住環境をローコストで手に入れることができます。
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