
1981年以前に建てられた建物を指す旧耐震マンション。築後50年を超えるマンションも増えてきた旧耐震の市場は、今後どうなっていくのでしょうか。
結論として、旧耐震マンションはヴィンテージとして資産価値を維持する物件と、老朽化や空室の増加に悩まされる物件で二極化がより一層鮮明になっていくと予想されます。
この記事では、旧耐震マンションにおける今後の資産価値の行方や建て替えの実情、そして現在所有されている方やこれから購入を検討される方が知っておくべき戦略について、不動産業界の視点から分かりやすく解説します。
旧耐震マンションの寿命はあと何年?
マンションの寿命には、建物の構造そのものを示す物理的な寿命と、維持管理にかかるコストから判断される経済的な寿命という、2つの異なる側面が存在します。
建物の寿命は100年以上
鉄筋コンクリート造(RC造)の建物は、定期的な補修などの適切なメンテナンスを実施していれば、物理的な寿命は100年以上あるといわれています。
つまり、建築から何十年も建ったマンションであっても、コンクリートの強度という側面だけで見れば、すぐに倒壊するリスクがあるわけではありません。
設備・修繕費が実質的な寿命となる可能性
実際にマンションの寿命を決めるのは、給排水管やエレベーターといった設備の老朽化だといわれています。
こうした設備は通常30年から40年周期で大規模な交換が必要になります。しかし、古い設計のマンションでは配管がコンクリートに直接埋め込まれている構造も多く、交換工事に莫大な費用が発生するケースが少なくありません。
管理組合の修繕積立金が不足して、重要設備の更新ができなくなってしまったときが事実上、そのマンションの寿命を意味することになります。
「古くなったら建て替え」が難しい理由
「古くなったら最後は建て替えになるだろう」と考える方もいらっしゃると思いますが、現実として老朽化を理由にした建て替えは困難です。
国土交通省のデータによると、これまでに建て替えが完了したマンションは全国でわずか数百件にとどまっています。
老朽化したマンションの建て替えが進まない理由は、大きく分けて以下の2つにまとめられます。
合意形成のハードルが高い
区分所有法では、マンションの建て替えを行うために所有者の「5分の4以上(80%以上)」の賛成が必要と定められています。※2026年調査現在
しかし、旧耐震マンションは住人の高齢化が進んでいるケースが多く、「今から仮住まいへの引っ越しなど面倒なことはしたくない」「資金上買い替えは難しい」といった理由で反対されることが多く、合意形成が難航するケースがほとんどです。
【今後の動向】法改正による緩和が進んでいる
国も築古マンションの急増を深刻な社会問題と捉えており、2026年4月には改正区分所有法が施行されるなど、法改正による緩和が進んでいます。
区分所有法の改正により、今までは区分所有者の5分の4の賛成が必要でしたが、耐震性、火災に対する安全性不足などの理由がある場合、4分の3(大規模災害時は3分の2)の賛成で決議可能になりました。
このように、政府による建て替え促進の流れは今後も続くと考えられます。
資金負担が重すぎる
建て替えの合意形成が進まないそもそもの理由として、建て替え時に住民が背負う資金負担が重すぎるという点が挙げられます。
多くの場合、解体費と新しい建物の建築費を全て現在の入居者が負担する場合、(戸数や建築の規模にもよりますが)1世帯あたり1,000万円以上の持ち出しが発生するといわれています。
築古マンションでは高齢者の割合が高いことも多く、入居者のみに負担を強いる形では、合意形成は現実的に困難です。
容積率に余裕があれば建て替えの可能性あり
建て替えが成功するためには容積率(その土地に建てられる建物の大きさの制限)に余裕があるかどうかが非常に重要です。
容積率に余裕があり、元々低層だったマンションを高層マンションに建て直せる場合、戸数を大幅に増やし、新しく増えた部屋をデベロッパーが一般向けに売却して利益を全体の建築費に充てることで、元の住人の負担を最小限にすることができます。
今後の旧耐震マンション市場は二極化する
今後の旧耐震マンション市場は、高い価値を維持し続ける物件と、老朽化と空室に悩まされる物件に二極化が進んでいくと考えられます。
価値が高まるマンションと下落しやすいマンションは、簡潔に言うと「資産価値が生じやすいかどうか」で決まります。具体的な特徴を見ていきましょう。
価値が高いマンションの特徴①アクセスがよい
築年数が古くなり建物の帳簿上の価値がゼロになったとしても、都心の駅近など土地そのものの価値が高いエリアであれば資産価値はある程度保たれます。
売却時のリセールバリューもつきやすいですし、将来マンションそのものの建て替えや売却が必要になった際に、土地の価値に目を付けたデベロッパーが資金を出してくれる可能性が高まるかもしれません。
価値が高いマンションの特徴②管理がしっかりしている
修繕積立金が計画通りに貯まっており、耐震補強工事や配管の更新などが適切に行われているマンションは、「ヴィンテージマンション」としてブランドを築くことができるケースも存在します。
また、修繕積立金をはじめとした資金が潤沢にあれば、10年後・20年後に法整備や周辺環境が変わった際、自力での建て替えという選択肢を持てる可能性もゼロではなくなります。
価値が下落しやすい物件の特徴①利便性が低い
立地の利便性が低いと、若い世代の新たな入居者が集まらずに住人の高齢化が徐々に進み、相続放棄などによる空室や管理費・修繕積立金の滞納が増加します。
資金不足で管理組合が機能しなくなると、建物の劣化が進んで最終的に市場で買い手がつかないマンションになってしまいます。
価値が下落しやすい物件の特徴②総戸数が少ない
総戸数が少ないマンションは、1世帯あたりの修繕費負担が重くなるため、修繕積立金が慢性的に不足しているケースが散見されます。
定期的な設備更新すらままならない状況では、将来の建て替えは確実に不可能です。また、老朽化による不具合を引き起こす大きな要因にもなります。
マンションの購入を検討している方が今取るべきアクション
旧耐震マンションの購入を検討される際、どうしても「内装の綺麗さ」や「真新しい最新設備」といった表面的な魅力に目を奪われがちです。しかし、将来にわたって資産価値を維持し、安全に住み続けるためには、以下のような条件を満たす物件を探すのがおすすめです。
- 耐震補強・耐震証明書の有無
- 管理状況がしっかりしている
- 立地の優位性
これら3つの条件のいずれか、もしくは全てを満たしていれば旧耐震であっても「ヴィンテージマンション」として長期的に価値を保てる可能性が十分にあります。
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