
マンションの間取り図で見かける「サービスルーム」は、広さや内装だけを見ると洋室とほとんど変わらないことがあります。
違いは主に、その部屋が建築基準法上の「居室」として扱える条件を満たしているかどうかです。サービスルームだから使いにくいとは限らず、書斎や収納、条件によっては子ども部屋など、用途に合わせて活用できます。
洋室とサービスルーム(納戸)の違い
洋室とサービスルームの大きな違いは、建築基準法上の「居室」に該当するかどうかです。
サービスルームは居室の基準を満たさない部屋
寝室や子ども部屋、リビングなど、継続的に人が過ごすことを前提とした空間は、建築基準法上の「居室」として扱われます。
住宅の居室では、採光に有効な窓などの開口部について、原則として床面積の1/7以上を確保する必要があります。換気については、原則として床面積の1/20以上の換気に有効な開口部を設けるか、基準に適合する換気設備を設けることが居室の基準です。

窓の開口部に関しては、2023年4月以降、一定の照明設備などの条件を満たす場合に、採光に必要な開口部を床面積の1/10以上まで緩和できる制度も設けられています。
実際には独立した3つの空間があっても、そのうち1室が居室として扱えなければ、「3LDK」ではなく「2LDK+S」「2SLDK」などと表記されます。
窓がなくても「洋室」カウントになる場合も

ただし、窓のない部屋でも、必ずサービスルームになるわけではありません。建築基準法では、ふすまや障子など「随時開放することができるもの」で仕切られた2室について、採光や換気の基準を判断する際には1室として扱うことができます。
そのため、窓がなくてもリビングなどの居室との間仕切り壁の大きな部分を開放できる引戸などで仕切られていれば、LD側の窓を含めて採光条件を満たすことで居室として扱えます。

一方、一般的な開き戸(ドア)で区切られた独立性の高い部屋は、部屋単独で条件を満たせなければ、間取り図では「サービスルーム」「納戸」と表記されます。
資産価値における違い
つまり、洋室とほぼ同じ広さがあっても、居室としての条件を満たしていなければ、間取り表記上は「S(サービスルーム)」「納戸」となります。
実際には独立した3つの空間があっても、1室がサービスルームなら「3LDK」ではなく「2LDK+S」です。3LDKを条件に物件検索している人には届きにくくなるため、売却時には3LDKとして表記できる住戸の方が評価されやすくなることがあります。
ただし、サービスルームがあること自体が住まいとしてのデメリットとは限りません。窓や採光をそれほど必要としない書斎や収納、趣味部屋として使うなら、一般的な洋室より用途に合う場合もあります。状況によっては資産価値を上げることもできるでしょう。
なぜマンションにサービスルームができる?
マンションでは、居住者の希望とは関係なく新築時点からサービスルームが設けられている場合があります。サービスルームが必要になるケースとして、以下のような事情があります。
採光を確保しにくい部屋割りになっている
特に間口に対して奥行きのある縦長の住戸では、LDKや主寝室などを外壁側へ配置すると、その内側に位置する部屋では十分な採光を取りにくくなります。
また、窓自体があっても、窓の外に共用廊下や建物があるなど、採光上有効な面積が不足すれば居室として扱えない場合もあります。
そういった場合、実質的な居室、もしくは広めの収納スペースとしてサービスルームを設計するケースが多いです。
部屋数を確保するために設けることも
限られた専有面積の中で、2LDKにもう一つ独立したスペースを加え、2LDK+Sとする間取りもあります。
完全な3LDKとして設計できなくても、書斎や収納、子どもの成長に合わせて使えるスペースが一つ増えることで、より広い生活用途が想定できるようになります。
サービスルームの使い方

サービスルームといっても、広さや設備は物件によって大きく異なります。3帖程度のサービスルームでも、廊下から独立して出入りでき、床や壁の仕上げがほかの洋室と同じであれば、実生活では一般的な小さな個室に近い感覚で使える場合があります。
具体的にどのような使い方が想定されるか、見ていきましょう。
書斎・テレワークスペース
自然光が少なくても比較的支障が出にくい用途が、書斎やテレワークスペースです。デスクと収納を置ける広さがあり、空調やコンセントを確保できれば、独立した仕事部屋として使えます。
リビングの一角に仕事スペースを設けるより、仕事と生活を切り替えやすいのもメリットです。
収納・趣味部屋
ベッドを置くには少し狭いサービスルームなら、収納や趣味のための部屋として使う方法があります。
衣類や季節用品をまとめて収納したり、本棚を置いて書庫にしたりすれば、ほかの居室へ収納家具を置く量を減らせます。
また、自然光の少なさを活かし、プロジェクターを使うシアタールームなどにする方法もあります。
子ども部屋
ある程度の広さと空調を確保できるサービスルームなら、子ども部屋として使うことも考えられます。
特に子どもが小さい時期から個室が必要になるまでの間など、限られた専有面積の中で家族それぞれのスペースを作る方法の一つとして有効です。
サービスルームのデメリット
独立した空間として使えるサービスルームでも、一般的な洋室より使い方が限られる場合があります。
自然光が少なく閉塞感を感じやすい
窓が小さい、窓の外が共用廊下や建物に近い、窓そのものがないといった部屋では、昼間でも照明が必要になることがあります。
短時間使う書斎や収納なら気にならなくても、寝室や子ども部屋として長時間使う場合は、暗さや圧迫感を感じるかもしれません。
狭すぎると用途が限られる
サービスルームには明確な広さの決まりがあるわけではないため、物件によって大きさはさまざまです。
ベッドやデスクを置くだけでほとんど余白がなくなる部屋では、寝室として使うより収納や書斎として使った方が便利な場合もあります。
間取り図の「S」という文字だけを見るのではなく、家具を置いた後にどの程度動けるスペースが残るかまで確認することが重要です。
エアコンを設置できない場合がある
サービスルームを仕事部屋や寝室として長時間使う場合、空調設備は重要です。
しかし、住戸の中央側にある部屋では外壁に面しておらず、室外機置場まで配管できないことがあります。
建物によっては隠蔽配管などでエアコンを設置できる場合もありますが、購入後に簡単に追加できるとは限りません。
個室として使う予定なら、内見時にエアコンの設置状況や新設可否を確認しておきましょう。
室内窓でサービスルームを過ごしやすく

窓のないサービスルームでも、リノベーションによって隣接する部屋との間に室内窓を設けることで、使いやすさを高められます。
LDKなど明るい空間に面して室内窓を設ければ、隣室から光を取り込みやすくなり、完全に壁で囲まれた状態よりも圧迫感を抑えられます。
光だけでなく視線も抜けるため、3帖程度のコンパクトな部屋でも広がりを感じやすくなります。また、エアコンを設置しなくても室内窓を開けることである程度LDKと空調を共有できます。
子ども部屋として使う場合は、LDK側から室内の様子を確認しやすくする使い方も可能になります。
サービスルームはリノベーションで洋室にできる?
サービスルームをリノベーションすれば、必ず洋室として表示できるようになるわけではありません。なぜサービスルームになっているのかを確認したうえで、変更できるか判断する必要があります。
簡単に洋室へ変更できるとは限らない
サービスルームになる原因が、住戸の窓位置や建物形状などにある場合、室内の間仕切り壁を動かすだけでは採光条件を満たせません。
特にマンションでは外壁や窓は共用部分に該当することが多く、リノベーションだからといって自由に新しい窓を設けられるわけでもありません。
現実的には「サービスルームを洋室に変える」のではなく、サービスルームを維持するか、サービスルームを潰して洋室やリビングダイニングと一体の空間にして部屋数を減らす、といったリノベーションの方が現実的なケースも多いです。
また、ドアを引戸にして他の居室と繋げることで法的な「居室」の定義を満たす、と言った方法を取るのも一つの手です
あえてサービスルームをつくる方法もある
リノベーションでサービスルームを増やし、例えば2LDKから2LDK+Sへ変更し、独立した空間を増やす方法もあります。
こうしたリノベーションでは、LDKや各個室を少しコンパクトにする代わりに、仕事部屋や収納、子ども用のスペースなどを追加できるメリットがあります。
広い部屋を一つ確保するより、それぞれの用途に合わせて小さな独立空間を増やした方が暮らしやすい家庭もあります。間取り変更では「3LDKにできるか」といった表記だけでなく、実際にどのような空間が必要なのかから考えることが重要です。
サービスルームだから避ける必要はない
サービスルームは建築基準法上の居室として扱えない部屋ですが、それだけで使い勝手が悪いとは限りません。
完全な3LDKまでは必要なくても、仕事部屋や収納など、独立したスペースがもう一つほしい場合には使いやすい間取りです。
同じサービスルームでも、広さ、窓の有無、明るさ、収納、エアコンの設置可否などには大きな差があります。
「S」や「納戸」という表記だけで候補から外さず、実際の部屋を見て、自分が想定している用途に合うかどうかを確認しましょう。
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